子供のこれからのことや私たちの老後のことなどを考え、引越しをした新興住宅地。一生賃貸住宅暮らしだと思っていた我が家が、一大決心をして購入した一軒家でした。それも滑り込みセーフで最後の一軒を購入することが出来たのです。
子供たちも学校は転校になるけれど、新しい家にワクワクした気持ちでいました。何十件も一緒に建ったので、皆引越し時期もほとんど同じ。我が家が引越しの日も何軒か一緒でした。
お向かいの家も同じ日に引越しをしてこられたので、その日は軽く挨拶。後日、きちんと引越しのご挨拶に行きました。話を聞くと、そのおうちのお子さんたちもうちと同学年ということ。一気に距離は縮まり、家族ぐるみのお付き合いとなりました。
他にも同じ小学校に通う子供たちを持つご家庭もあり、そして親たちもだいたい同じ世代ということもあって、よく集会所のようなところで集まりお茶会をしたり、どこかのお家で持ち寄りパーティーをしたりしていました。
そんな楽しい時期を一年ほど過ごしていた頃、なんだか周りの人が急によそよそしい感じがする気がしました。それでも気のせいだろうとあまり気にはとめていなかったのですが、ある日ある家庭の家の前を通りかかると、にぎやかな声がしてきました。
ふと見ると、その家の前に見慣れたおもちゃや漏れてくる子供の声に聴き覚えが。私を除いた仲の良い人たちが集まっていたのです。一瞬にして疎外感が私を襲い、その場に立ちすくんでしまいました。よくよく考えてみると、思い当たることがひとつ。
子供同士が遊んでいる時に、うちの子供が相手の子供の持ち物を間違えて持って帰ってきてしまったこと。もちろん丁寧に謝りましたが、どうやらそれからうちの子は盗みをはたらくと噂になってしまったよう。
ちょっとした間違いで、そんなに大変なことになると思っていた私と子供はそれからものすごく落ち込みました。もともと引っ込み思案な子供はなかなか仲間に入れなくなり、私も神経をすり減らし、このままこの地で一生…と考えると気がおかしくなりそうでした。
とうとう私たちは家を売却して再び引越しをすることに。引越し当日の周りの森閑とした様子は、思い出すだけでも気持ちがザワザワとしてきます。